吾輩はナナである prologue 

吾輩はナナである

吾輩は犬である、名前はナナ。れっきとした女の子である。
生まれて半年で峠を越えた集落の山や畑に囲まれた家にやってきた。
しばらくはかわいがられ、それなりに楽しく悠々自適な暮らしを送っていたのである。
一昨年の夏、我が家の倉庫の段ボール箱の中から子猫の鳴き声がするではないか、ご主人様がのぞいてみると、とても小さな生まれたばかりのトラ猫がぽつんと一匹。
我が家はみんな猫が嫌いだ。今までどれほど家の周りや畑にうんちやらおしっこやら、においや片づけに嫌な思いをしたことか。ちなみに幼かった私はこのウンチを食べて怒られ、口から顔から何度ごしごし洗われ、消毒されたことか。だから吾輩も嫌いなのだ。
しかしこの子猫が現れたせいで吾輩の犬生は大きく変わっていくのである。
あの幸せだった日々はもう帰ってこないのだろうか。

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