おととしの夏、ご主人様が小菊の出荷準備のため倉庫を片付けていた時のことである、どこからともなく子猫らしき鳴き声が聞こえてきた。そもそも吾輩は猫が嫌いだ、我が家にやってくる猫は見つけ次第追いかけ、追い払っていたのである。我が家の隣に自転車で行商をしているおじさんが住んでいる。以前はお店だったそうだが今は呉服の行商をやって生活している。地域の人々はヤミヤさんと呼んでいる。別にそういうことをしていたわけでもないのにそういう愛称で呼ぶようになったらしい。先代はお菓子作りの職人で、ご主人様が子供のころはよく買って食べていたらしいのだ。最近はここに猫がやたらと住みつき、我が家にやってきては糞尿を残していくのだ。どうやらその鳴き声は棚の上にある段ボール箱の中から聞こえてきているようである。中をのぞくとまだ毛も短く、青い目をした縞模様の子猫が一匹いるのであった。吾輩が見つけていたなら噛みついていたのだが、ご主人様が箱から取り出した。どうやらこの子だけ母親が残していったのではないかと推測される。連れ出す前にご主人様たちに見つけられたと思われるのだ。雌猫でのちにゆずと名付けられた。
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